「 宮様と高松中学校の生い立ち 」

9 裸足の時代.

裸足の時代

 高松中学枚時代の写真が何枚か残っている。開襟シャツを着ているから夏なのだろうが、
下は裸足である。あれは遊びに熱中しているうちに靴を脱いでしまったのではない。あの
頃には、夏場はたいてい上ばきを持って来なかった。教室の中で裸足でいて、休み時間に
はそのまま外へ飛び出してしまう。始業の鈴が鳴ると泥足を洗って教室へもどる。
 あの頃は、たいていの家が貧しかった。そして温い季節には、土の上を裸足で走り回る
ことが、男の子にとってごく自然なことだった。今の子供たちよりも足の真の皮が厚かっ
たのだろうか。
 運動会は十一月のはじめだったと思うが、十月の噴から休み時間や放課後によくトラッ
クを走ったものだ。あの季節にもまだ裸足だった。秋が深くなるにつれて校庭の土が、じ
つに気持ちのよい弾力性をもちはじめたのを覚えている。今の親たちが見たら、あわてて呼
んで靴をはかせるかも知れない。(後略)
 (二期生 古井由吉氏 作家 芥川賞受賞)


連合運動会

 「男子総合優勝高松中学枚」我々はこの声をまっていたのだ。高松中学枚の応援席は、
かんこの声で沸きたった。我々はその声を背で聞きながら、グランド上で審判の発表を聞
いていた。「次は学年順位であります。三年優勝高松中学校‥」又も上がる喜びの声、そし
て興奮は絶頂に達した。来賓席におられた校長先生も非常に喜んでおられた様である。
 どうか在校生諸君、あの感激を新たにして「努力にまさる力なし」の意気をもって連勝
の記録を残されん事を切に希望する。
 昭和二十九年一月十日 三年 運動部(三期生)